ONLOOKER Ⅲ
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曇天の中庭で千佐都と出会ってから、もう一週間ほどになる。
直姫を見かけるたびににこにこと声をかけてくるようになった彼女が、3年B組であることを思い出したのは、そんな日の放課後だった。
「そういえば、准乃介先輩」
「んー? なーに」
「3年B組の、東って人、知ってますか?」
「あずま!?」
准乃介に話を振ったことに他意はなかった。
三年生の話なのだから紅でもよかったのだが、別になんのことはない、ただ単に、たまたま向かいに座っていたのが、彼だったというだけのことだ。
しかし直姫の問いに素早く反応したのは、准乃介ではなく、その隣に座る聖だった。
「東って、東千佐都!?」
「え、はい」
ただごとではない聖の食い付きに、直姫は眉を寄せた。
少しの驚きと不信感を全面に押し出したような、失礼な後輩の表情を気にも留めず、聖までなぜか、盛大に顔を顰めてみせる。
そんな様子を見た紅が、怪訝そうに言った。
「千佐都か? 私はそれなりに親しくしているが……聖、どうかしたのか?」
「どうかしたもなにも……俺がすげー苦手な奴らの一人っスよ!」
「聖先輩も知り合いなんですか?」