ONLOOKER Ⅲ

***

「あれ?」


その日真琴が感じた違和感は、嫌なものではなかった。
正確にいえば、そっちの方が本来の日常風景なのだ。
だが、なにしろ久しぶりに見るので、一瞬驚いてしまった。


「まこちゃん、どうかしたにょろ?」
「あの、ほら、あれ……」
「え? あ、」


南校舎のアーチの下で偶然会った恋宵と直姫が、真琴の視線の先を追う。
そこに見たのは、少し懐かしいような、ようやくの光景。
見慣れた背中が前後に並んで、中庭の真ん中を歩いていた。


「紅先輩と准乃介先輩、仲直りしたんですねぇ」
「ほんとだ、よかったにゃあ」
「准乃介先輩の機嫌が悪いと、生徒会室の空気も悪いですからね……」


准乃介にからかわれた紅がムキになって、それをまた准乃介がからかって、たまに本気で怒られる。
それを遠巻きに眺めては恍惚の溜め息を吐く、女子生徒たち。
時々紅の視線を貰っては、悲鳴のようにおはようございますと合唱している。

そんないつもの様子がたった一週間と少し見られなかっただけで、こうも調子が狂うものなのだ。
生徒会での本当の意味でのムードメーカーはきっと准乃介なのだと、実感した彼らだった。

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