ONLOOKER Ⅲ
エマージェンシィ、エマージェンシィ
* *
「迷惑かけて、悪かったな。……色々と」
不意にぽつりと呟かれた言葉に、直姫はきょとんとした(とは言っても、端からみれば無表情に変わりはない)表情を見せた。
職員室への届け物を、荷物が多いからと、二人で運んだ帰りのことだ。
中庭の真ん中を通る道を、急ぐわけでもなく歩く。
「いえ、そんな、迷惑なんて」
「いや、はじめから私が、自分で片を付けていれば良かったことなんだ」
「でもそれは、」
「生徒会副会長が生徒会に手間を取らせるなんてな。自分で自分が情けないよ……」
微笑みが、自嘲的だ。
いつもそうだ、彼女は。
なんでもかんでも背負い込んで、私は大丈夫だから、このくらい一人でなんとでも出来るからと、気丈に振る舞っているように思える。
頼もしいだとか、責任感に溢れているだとか、そんなのではない。
これでは単なる独り善がりだ。
しかし、そんな真面目なところが彼女の良さの一つでもあるのだから、一概にそんな顔をするなとも言えず、困る。
ただ、そんな彼女を一番近くで見ていたのだろう彼の思いが、なんとなく少しわかって、直姫は言った。
「……紅先輩がそんなだから、准乃介先輩が怒ったんだと思うんですけど」
「え?」
直姫には珍しい言い方だ。
興味がない物事に関してはひたすらにどうでもよく、それがどんなであろうがこれからどうなろうが、無関心を貫く彼女には。