ONLOOKER Ⅲ


北校舎の屋上から落ちてきた鉢植えは、明らかに作為を感じさせた。

紅の悲鳴を聞いて駆け付けた夏生たちが見たのは、涙目の紅と苦笑いの直姫と、砕けた鉢植え。
上から落ちてきた、という直姫の話を聞いてすぐに屋上に向かったが、そこはすでにもぬけの殻だったそうだ。

事情を聞いた准乃介は、眉をひそめて呟く。


「……それって」
「紅先輩を狙ったんでしょうね。鉢植えには、角の尖った石がぎっしり詰められてました」
「ヒドイにょろ……そんなのまともに当たってたら、大変じゃにゃい」
「直姫、直接当たってはいないの?」
「はい、だいぶ逸れたところに真っ直ぐ落ちてきただけだったので」
「怪我は、鉢植えの破片で切っちゃったんですよ」
「あぁ、そっか」


真っ白な包帯を一撫でして、直姫は溜め息を吐く。

さっきは一騒ぎになってしまったが、結局、中庭の地面が少し抉れて、直姫のシャツが一枚だめになった程度で済んだ。

恋宵が青い顔をしているが、もし犯人が狙いを外さずに直撃していたら、本当に怪我どころでは済まなかっただろう。
死んでいたっておかしくないのだ。

今までの幼稚はいやがらせと比べて、急に洒落にならないレベルまでエスカレートしている。
今朝の紅と准乃介の仲睦まじい様子を見て、犯人が逆上したのだろうか。
二人の関係を引き裂きたくてのことだとして、二人が仲違いしていたこの一週間の間、嫌がらせが止んでいたわけではないことが気になるが。

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