ONLOOKER Ⅲ
「でもこれで、元剣道部の豊中さんが怪しいってことになりませんか?」
「んぅ? にゃんで?」
「だって、狙いも定められずに真っ直ぐ落ちてきただけってことは、重くて投げられなかったってことじゃないですか?」
「そうだね……まー、あんだけの石がつまってたら当たり前か」
「あんなの、女の子には持ち上げられないと思いません? 玉川さんだって、そんな力があるようには見えませんし」
「そっかー。確かににゃあ」
「二年生が北校舎に出入りするのは、生徒会と部活動くらいですけど……その他で入って来てたら、目立ちますか?」
「そだねぇ。じゃ聖、聞き込み」
「え、俺っスか」
人柄と動機でいうなら、紅を一方的に好いていた玉川剛史。
准乃介に憧れを抱いていた里田麻奈美も、動機を考えれば可能性は拭えない。
だが、実行力でいうなら、紅の部活の後輩だった豊中伸二。
先が見えない焦りと、ついに傷害沙汰にまで発展した恐怖と、犯人の意図が掴めない苛立ちで、思考が鈍っていたのだろうか。
彼らはまだ、気付いていなかった。
肝心なことを、見逃していると。