ONLOOKER Ⅲ


最後の可能性は、紅への嫉妬心。
脅迫状の内容そのままの意味、つまり生徒会の一員である紅が羨ましくて妬ましくて引き離してやりたい、という動機だ。

その場合、三人の容疑者に当てはめるならば、准乃介のファンである里田が、彼との仲を引き裂きたい一心で、ということになる。
誰の目から見たって、どんな女性にでも均等に優しい准乃介が、紅だけを特別扱いしているのは明らかだからだ(この際、紅の必死の否定は聞き流すのが得策である)。

恋宵の言ったように、生徒会役員の誰でも可能性があるのは確かだ。
だが他の役員、例えばさっき茶化して言ったように恋宵ならば、聖や夏生のほうが仲が良いし、真琴や直姫とも、先輩後輩として以上の関係はない。
とりあえず今は妥当なところとして、准乃介だと考えていていいだろう。

と、不意に、しばらく黙り込んでいた直姫が、口を開いた。


「あの、夏生先輩」
「なに、直姫」
「……放課後、ここに呼んで欲しい人がいるんです」
「え?」
「直姫、犯人分かったの!?」
「うん、多分。本当はもっと早く、気付けたはずだったんだけど」


なんだか意味深長な物言いだ。
真琴は訝しげに首を捻った。
恋宵や聖も、似たようなものだ。
紅も、不安げに表情を曇らせた。
そんな中で夏生は平然と、直姫に視線をやる。

そして、もう一人。
直姫の言葉に驚くどころか、薄く笑みさえ浮かべて見せた人物が、いた。


「それってもしかして、一昨日とか」
「え」


むしろ直姫のほうが、わずかに驚いてしまう。
それから彼女は、苦笑いをこぼした。


「……さすが、准乃介先輩」

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