ONLOOKER Ⅲ
「ただ……破片の片付けが間に合わなくて。他の誰かがまた怪我をしたらと思うと、心配で……」
「でも、中庭なら用務員さんが毎日掃除をしてくれるんじゃ……?」
「あ、そっか……そうですよね」
目をぱちりと瞬かせて、はにかんでみせる。
夏生は、直姫と対照的なほど表情を消していた。
「ご心配には及びません。きっとすぐ治りますよ。……ただ、変なんですよね……」
「な……、なにが、ですか?」
なにを考えているのかなんてさっぱり読み取れないだろうに、その人は、夏生の顔色を窺うように見た。
なにか下手を打っただろうか、なにか変なことを言っただろうか。
焦りと怯えの浮かんだその表情のほうが、よほど不自然だということに、気付いていないのだろうか。
夏生の今の言葉は、分岐点だった。
相手がどう出るか、二つのパターンに分けるための。
「彼はこの怪我について、『割れた植木鉢の破片で怪我をした』以上のことは言っていないんですが。どうして中庭だと?」
「え?」
「君、中庭っていうのは本当?」
「えぇ、本当ですけど……誰にも言ってないのに、なんで知ってるんですか?」
わざとらしいやりとりと、腹が立つほど不思議そうな顔。
真琴はなるべく真剣な顔を心がけていたが、隣に立つ聖は、眉と口許をひくつかせた。
恋宵が、睨み付けるような目配せをする。