ボーカロイドお雪
それだけなら単なる偶然という事もあるだろう。どんなボーカロイドも実在の人間の声をデジタルデータ化した物で出来ている。どこかにその声を提供した人間がいる。それはお雪だって同じはずだ。だから、それだけなら驚くほどの事じゃないかもしれない。
でもあたしは、その女の子の容姿と着ている服に目を奪われていた。似ている。お雪がパソコンの画面の中で二頭身キャラから七頭身の少女の姿に変わった事が何度かあった。あの時の顔立ち、体つきがスクリーンの中の少女にあまりにも似すぎていた。
もちろんお雪は3Dコンピューターグラフィックだったから、本物の人間であるその少女と完全に同じかどうかは断言出来ないけど。問題はスクリーンの中の少女が着ている服だ。
白いワンピース型のドレスで、足首近くまでユリの花のように広がったスカート。ノースリーブで肩は細いひもで吊ってあるが、肩から胸元のあたりの肌がむき出しにならないように、白いレースがあてられている。
お雪が七頭身キャラになった時の服と細部に至るまで全く同じ。これは単なる偶然とは思えない。
ふいに横から肩をポンポンと叩かれてはっと我に返った。高橋先生が横にいて、あたしはいつの間にか椅子から立ち上がって呆けたような表情でスクリーンに見入っていたようだ。
「佐倉さん?どうかした?気分でも悪いの?」
そう訊く先生にあたしは首を横に振って、身振り手振りで音楽準備室の方を指さし、授業の後で話がしたいと伝えた。暗いからPDAが使えない。先生はあたしが口がきけない事を知っているからすぐにあたしの言いたい事を察してくれた。
「いいわ。でも今は授業中だから、とにかく座って落ち着いて。じゃあ、後で」
そう言って先生はあたしを座らせ、席の後ろの椅子に戻って行った。あたしはまだ呆然とスクリーンの中の少女を見つめていた。
心の奥のどこかで「そんな事知って何になるの?」という声がしたような気がした。確かにそれはその通りだ。あたしはもうお雪を捨てた。この女の子がお雪の音声データの提供者だとして、それが今のあたしにとって何の関係がある事だろう?
でもあたしはどうしてもそのままにはしておけなかった。自分でも何故かは分からなかったけれど、どうしてもその少女の事をもっと知りたくなった。
でもあたしは、その女の子の容姿と着ている服に目を奪われていた。似ている。お雪がパソコンの画面の中で二頭身キャラから七頭身の少女の姿に変わった事が何度かあった。あの時の顔立ち、体つきがスクリーンの中の少女にあまりにも似すぎていた。
もちろんお雪は3Dコンピューターグラフィックだったから、本物の人間であるその少女と完全に同じかどうかは断言出来ないけど。問題はスクリーンの中の少女が着ている服だ。
白いワンピース型のドレスで、足首近くまでユリの花のように広がったスカート。ノースリーブで肩は細いひもで吊ってあるが、肩から胸元のあたりの肌がむき出しにならないように、白いレースがあてられている。
お雪が七頭身キャラになった時の服と細部に至るまで全く同じ。これは単なる偶然とは思えない。
ふいに横から肩をポンポンと叩かれてはっと我に返った。高橋先生が横にいて、あたしはいつの間にか椅子から立ち上がって呆けたような表情でスクリーンに見入っていたようだ。
「佐倉さん?どうかした?気分でも悪いの?」
そう訊く先生にあたしは首を横に振って、身振り手振りで音楽準備室の方を指さし、授業の後で話がしたいと伝えた。暗いからPDAが使えない。先生はあたしが口がきけない事を知っているからすぐにあたしの言いたい事を察してくれた。
「いいわ。でも今は授業中だから、とにかく座って落ち着いて。じゃあ、後で」
そう言って先生はあたしを座らせ、席の後ろの椅子に戻って行った。あたしはまだ呆然とスクリーンの中の少女を見つめていた。
心の奥のどこかで「そんな事知って何になるの?」という声がしたような気がした。確かにそれはその通りだ。あたしはもうお雪を捨てた。この女の子がお雪の音声データの提供者だとして、それが今のあたしにとって何の関係がある事だろう?
でもあたしはどうしてもそのままにはしておけなかった。自分でも何故かは分からなかったけれど、どうしてもその少女の事をもっと知りたくなった。