ボーカロイドお雪
そして雪子ちゃんのお母さんは、おもむろにこう切り出した。
「ねえ、お嬢さん。あなた、雪子の歌を前に聴いたという事だけど……それはボーカロイドとかいう物で、なのではなくて?」
ギクッ!あたしは心臓が停まりそうになるほど狼狽した。ひょっとして最初からばれてた?
「ああ、でも私はそのボーカロイドというのがどんな物なのかはさっぱり知らないし、分からないの。何かパソコンに関係ある物なのかしら?パソコンでビデオとかを見られるとか、そういう物なのかしら?」
と、よかった。この人はボーカロイドとしてのお雪の事を知らないようだ。下手に説明してぼろが出るとまずいのであたしはPDAで「まあ、そんなような物です。」
それを読んで彼女が続ける。
「とにかく、そのボーカロイドとか言う物で生前の雪子の歌をあなたが聞いて、気に入ってくれた、そういう事ですよね?」
あたしはブンブンと頭を縦に振り、笑顔でその場を取りつくろう事に成功した。ジャスミンティーのグラスが空になりかけた頃、雪子ちゃんのお母さんは突然こう言った。
「雪子のお墓はここから歩いて十分ぐらいの所にあるのだけど、もしよろしかったら行ってみる?外はまだ暑いから無理にとは言いませんけど……」
あたしはしばらく考えてPDAで「いえ、お願いします」と彼女に見せ、両手を会わせてお願いのポーズをした。
それから二人でその墓地へ出かけた。高級そうな住宅街のはずれに高いブロック塀で囲まれた墓地があった。わりと古くからある墓地なのだろう。周囲の雰囲気にそぐわない昔ながらの仏教式の墓地だ。
雪子ちゃんのお墓は奥まった場所の片隅にあった。墓石の表面には「草薙家代々」と彫ってある。どうやらお父さんの家の方のお墓らしい。
まず彼女のお母さんが持参した線香一束に火をつけ、もう一束をあたしに手渡した。あたしは彼女から借りたライターで火をつけ雪子ちゃんの墓前に供える。
それから二人で墓石の前にしゃがんで手を合わせた。あたしの中にいろいろな思いが錯綜した。二年前に中学2年生で亡くなったそうだから、生きていればあたしと同い年、同じ学年だったはずだ。
「ねえ、お嬢さん。あなた、雪子の歌を前に聴いたという事だけど……それはボーカロイドとかいう物で、なのではなくて?」
ギクッ!あたしは心臓が停まりそうになるほど狼狽した。ひょっとして最初からばれてた?
「ああ、でも私はそのボーカロイドというのがどんな物なのかはさっぱり知らないし、分からないの。何かパソコンに関係ある物なのかしら?パソコンでビデオとかを見られるとか、そういう物なのかしら?」
と、よかった。この人はボーカロイドとしてのお雪の事を知らないようだ。下手に説明してぼろが出るとまずいのであたしはPDAで「まあ、そんなような物です。」
それを読んで彼女が続ける。
「とにかく、そのボーカロイドとか言う物で生前の雪子の歌をあなたが聞いて、気に入ってくれた、そういう事ですよね?」
あたしはブンブンと頭を縦に振り、笑顔でその場を取りつくろう事に成功した。ジャスミンティーのグラスが空になりかけた頃、雪子ちゃんのお母さんは突然こう言った。
「雪子のお墓はここから歩いて十分ぐらいの所にあるのだけど、もしよろしかったら行ってみる?外はまだ暑いから無理にとは言いませんけど……」
あたしはしばらく考えてPDAで「いえ、お願いします」と彼女に見せ、両手を会わせてお願いのポーズをした。
それから二人でその墓地へ出かけた。高級そうな住宅街のはずれに高いブロック塀で囲まれた墓地があった。わりと古くからある墓地なのだろう。周囲の雰囲気にそぐわない昔ながらの仏教式の墓地だ。
雪子ちゃんのお墓は奥まった場所の片隅にあった。墓石の表面には「草薙家代々」と彫ってある。どうやらお父さんの家の方のお墓らしい。
まず彼女のお母さんが持参した線香一束に火をつけ、もう一束をあたしに手渡した。あたしは彼女から借りたライターで火をつけ雪子ちゃんの墓前に供える。
それから二人で墓石の前にしゃがんで手を合わせた。あたしの中にいろいろな思いが錯綜した。二年前に中学2年生で亡くなったそうだから、生きていればあたしと同い年、同じ学年だったはずだ。