太陽に恋をした
応援するフリをして、本当は愛美が失恋することを望んでいた。
それなのに、愛美は私の恋を応援してくれると言った。
愛美はなんて……心が広いんだろうと思った。
そして自分は、なんて小さい人間だと実感した。
「菜月は、可愛いんだからもっと自信持ったら」
「愛美のが可愛いじゃん。それに私は、拓真とは友達のままでいいの」
「菜月は、席が隣だから普通に話せるもんね。席が隣同士じゃなくても……2人は仲良くなってたのかな」
言われてみれば……。
「私……そんなこと考えたこともなかった。隣の席に拓真がいるのが当たり前だったから」
「あたしは、菜月が羨ましかった。……今日、稲葉くんに告白して、あたしじゃ駄目なんだってのはハッキリ分かったんだ。それにスッキリもした」
愛美は、満面の笑顔で胸の内を話していた。
私は、愛美に一言謝りたくて彼女を外に誘った。
「私ね、愛美に謝りたいことがあるの」
「えっ!? 何」
「愛美が、拓真に告白する時、口ではうまくいくといいねって、言ったけど、本心は失恋することを、願ってたんだ、ゴメンね」
「好きならそんなの、当たり前じゃん。気にしなくていいよ。それに、あたしは失恋する覚悟で告白したんだし。さっき断られて、稲葉くんのことは、もう吹っ切れたから」
「でも、ちゃんと本当のことを話して置きたくて」
「あたしが、さっき言ったのは本心だから。菜月と稲葉くん、お似合いだもん。菜月……佐野さんに負けないでね」
「うん、ありがとう」
愛美と握手を交わし本当の意味で友達になれた気がした。
愛美と二人で、部屋へ戻ると、なんと……拓真が女子部屋へ来ていた。
すると拓真は強引に、私の腕を掴んできた。
「ちょっと何?」
「今から、ちょっと外に行こうぜ。すぐに戻れば、バレないから大丈夫だって」
――そっ、そういう問題じゃないでしょ。
本当はルール違反だと思ったけど、そのまま拓真に付いて行くことにした。
宿舎から少し離れた場所まで歩くと、拓真はもう片方の手に持っていた、手提げ袋から線香花火を見せてきた。
「菜月は、こういう好きそうな気がして……隠して持ってきたんだ」
「確かに好きだけど……バレたら確実に怒られるよ」
「大丈夫、ゴミは持ち帰るし、一本ずつだけだしか持って来なかったから」
拓真は、小型ライターで線香花火に火を着けた。