太陽に恋をした
帰りは競争はないから楽しみながら、泳げるのが嬉しい。
「菜月、疲れてないか?」
「だっ、大丈夫だよ。これでも毎日、鍛えてるから」
「それも、そうだな」
拓真はすぐに、私の近くに来てくれたから嬉しかった。
私と拓真が楽しく喋っていたら、急に佐野さんが私たちの側に近寄ってきた。
どうして佐野さんが来るのって……心の中で呟いた。
せっかく拓真と二人になれたのに……今日だけは佐野さんに邪魔されたくなかった。
「拓真くん、ヒドイよ。あたしを置き去りにして、池谷さんなんかと一緒にいるなんて」
「……はぁー」
拓真は佐野さんの言葉に、ため息をついていた。
私だって……佐野さんにそこまで言われる筋合いはない。
いつも佐野さんに、言われっぱなしだから悔しい。
たまには何か言った方がいいよね。
私は、とっさに思いついたことを口にした。
「私と拓真は友達なんだから、別にいいじゃない」
「……友達ねぇ。男女間の友情なんて、本当にあるのかしら? あたしは有り得ないと思ってるけど」
「それは、佐野の考えだろう。お前の考えを俺や菜月に押し付けるのは、筋違いだぜ。俺と菜月が友達なのは事実だから」
「2人が友達っていうのは分かった。それなら別に、あたしも一緒に居たって構わないしょ」
拒否しても無駄だと思ったらしく拓真は、佐野さんの言葉に頷いていた。
私は嫌だったけど……友達だと宣言してしまったから拒否することが出来なかった。
佐野さんは拓真にベッタリくつっいたままだったので結局……三人でスタート地点まで戻ってきた。
対岸に到着すると、佐野さんは足早に、自分のクラスへと戻って行った。
昼食が終わったら、4組はキャンプファイアーの準備をしなくてはならない。
少なくとも……自由時間の間は、佐野さんに邪魔されることはない。
出来れば……拓真と二人きりで過ごしたい。
でも、それは無理だよね。
「ねぇ拓真……自由時間、何しようか?」
「本当はバスケしたいけど、ゴールがないからなぁ……海と言ったらビーチバレーだから、ビーチバレーしようぜ」
ここに来てまで、バスケがしたいなんて、拓真は本当にバスケ馬鹿なんだから。
グループ内でも、自由時間はビーチバレーをすることで皆の意見が一致した。