太陽に恋をした
拓真は以前、将来の夢はプロバスケットボール選手になりたいって言ってた。
でもなれなかったら……どうするんだろう?気になった、私は拓真に問い掛けることにした。
「拓真の将来の夢は、プロになることだよね?叶わなかった時のことって、何か考えてるの?」
拓真は、迷わずに口を開いた。
「もちろんだよ。プロはそんなに甘い世界じゃないから。プロになれなかったら、体育教師になって、バスケ部の顧問をしたいなって考えてる」
「ふーん、そうなんだ。拓真って、本当にバスケ馬鹿だよね」
「どうせ俺は、バスケ馬鹿だよ。菜月の夢は? 俺の夢は話したけど、菜月の夢は聞いたこと無かったよな」
「そう言えばそうだね……私の夢は美容師だよ。今は中学生だからオシャレとかしてないけど、興味はあるんだよね」
「そうなんだ。俺……菜月の夢、応援するよ。だから、菜月にも俺の夢を応援して欲しい」
「……そんなの、当たり前じゃん」
お互いの夢を応援するのって……いいことだなと思った。
拓真との会話が途切れたから何気に携帯を見ると2周目を乗る前に、亜希からメールが来ていた。
『遥斗って……菜月のことが好きなの? 告白されたんでしょ』という内容だった。
どうやら亜希は、さっきの遥斗の行動を勘違いした様子が伺えた。
さっきキスしていたから、2人はカップルになったんだから、誤解だと既に分かってるはずだから、返信はあえてしなかった。
2周目も終盤になり……拓真とこの空間にいられるのも、あと僅かだと思うと寂しくなった。
会話が少なくなり、無言になっても居心地は良いから全く気にならない。
「あのさ、菜月……1つ聞いてもいい?」
「……何?」
「数学の宿題って終わった?」
えっ!? 聞きたいことって何だろう……そんな拓真の問い掛けにドキドキした自分がバカだった。
もうすぐ、観覧車から降りるというのに……拓真は宿題の話を始めるんだもん。
もう少し色気のある話かと期待したけど……宿題の話だったなんて……。
「うん、終わったよ」
「出来れば……近いうちに図書館で、4人で宿題したいなーと思ったんだけど、ダメかな?」
私は、すぐに拓真の狙いが読めた。
「まったく、男ならはっきり言えばいいでしょ。写させてって」
「菜月に敵わないな。その通りだよ。写させて下さい」
「分かった。でも、あの2人はデートしたいんじゃない?私たち2人で図書館に行こうよ」
「……そうだな。確かに邪魔しちゃ悪いもんな。俺、そういうの鈍いみたいだから」
鈍すぎだよ……私は、口にしなかったけど心の中で囁いた。