太陽に恋をした
観覧車から、降りる時が刻一刻と近付いてきた。
拓真も私も、同じ気持ちだった。
めでたくカップルになった亜希と遥斗を、2人きりにしてあげたいと思った。
観覧車から降りた後、私と拓真はトイレに行くふりをしてわざと2人とはぐれた。
私と拓真はそのまま帰ろうと……出口に向かう途中で、亜希と遥斗に遭遇してしまった。
「お前ら、何処に行ってたんだよ?」
遥斗が、ちょっと怒り気味に話しかけてきた。
えっ!?
何で、そんなに怒ってんだろう?
せっかく、2人きりにしてあげたのに……。
もしかして……嬉しくなかったの?
そんなはず無いよね。
私からすれば、自分たちからはぐれるのが普通じゃないって思う。
私が遥斗たちの立場だったら……ありがとうって感謝するけどなぁ。
拓真はしょうがないなぁーって感じで真相を話した。
「せっかく2人にしてあげようと思ったのに……なんだよその言いぐさ。菜月もそう思うだろう。普通は喜ぶだろ」
「……うん、そうだね」
「拓真……菜月も、そんな気を遣う必要ないだろう。いくら俺と亜希が付き合うことになったからって……今日は4人で遊びに来たんだからさ。亜希だってそう思うだろう」
「うん、そうだよ。だから4人で帰ろうよ。でも2人の気遣いは嬉しかったよ」
拓真と私は亜希と遥斗にうまく丸め込まれてしまい、結局4人で帰ることになった。
2人きりになりたいと思わないなんて……この2人は変わってるなと思った。
翌日、学校へ着くと亜希に呼び出された。
「ねぇー菜月、遥斗の相談って、何だったの?」
もしかして……昨日のことを詰め寄られてる?。
「もう、2人はめでたく付き合うことになったんだから、心配しなくても大丈夫でしょ」
亜希に対して、努めて明るく振る舞ってみた。
「だって……気になるんだもん。もし、菜月があたしの立場だったら同じ気持ちにならない?」
「うっ、そう……言われると」
「でしょ。だから教えてよ」
「分かった。遥斗は亜希のことが好きだから、亜希に他に好きな人がいないかって聞かれただけだよ。だから不安になる必要なんて全然ないんだよ」
「本当に!? 遥斗も私に告白するつもりでいたんだ」
「その様子だと、告白は亜希からしたんだね。遥斗には亜希の気持ちは、はっきりと言えないから言わなかったけど、告白頑張りなよって後押しだけしたんだ」
「そうだったんだ。あたしが告白したら遥斗がビックリしてたから。あたしも両想いだって分かって嬉しかったけど」
「そっかぁ、遥斗……自分から言いたかっただろうな」
「まぁ伝えちゃえば、どっちからでも関係ないよ。ねぇ……菜月は本当に告白しなくていいの?」
「うん、今のままでいい。拓真とは友達でいる」
私がそう断言すると、亜希はそれ以上何も言わなかった。
その後の夏休みは、拓真と図書館に行ったり……部活に励んだりしているうちに終わりを迎えた。