私立聖ブルージョークス女学院
単元5 葉月
 夏休みの半ばの登校日。久しぶりに登校して校門をくぐって来る生徒たち。服装検査という事で、僕は他の数人の先生たちと一緒に校門のそばに立っていた。
 すると明らかに様子がおかしい生徒が一人いた。両手で顔を覆って泣いているようだ。足取りもよろよろとおぼつかない様子で、二人の他の生徒に抱きかかえられるようにして校門を通り過ぎて行く。
 それを待っていたらしく、保健室の女の先生が泣いている子を抱きかかええるようにして、校舎へ連れて行った。僕は気になったので彼女に付き添っていた二人の生徒を呼び止めて訊いてみた。
「君たち、さっきの子はどうかしたのか?どうもただ事じゃない様子に見えたんだが」
 彼女たちは憤懣やるかたない、といった口調で答えた。
「痴漢にあったんですよ。電車の中で」
「ち、痴漢!いや、それはけしからんな」
 この学校は私鉄の駅から歩いて十分ほどの場所にあり、わが校の通学生の多くはその電車を使っている。
 もう一人の生徒が続けて言う。
「あの子、胸おっきいから以前からよく狙われてたんですよね。でも今日に限って女性専用車両が満員で……そしたら、案の定……」
「そ、そうか。いや、分かった。君たちも用心するんだぞ」
 その私鉄は女性専用車両を設けているのだが、朝夕のラッシュ時には一台や二台の専用車両で女性客全員を収容できるものじゃないしな。
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