私立聖ブルージョークス女学院
単元10 睦月
 年末年始の休暇を実家でのんびり過ごし、リフレッシュした気分で新年の仕事にあたる。その日は推薦入試の面接試験に備えた特別授業のディベートの訓練だった。特定の社会問題などをテーマに、二人一組になって賛成、反対それぞれの立場から論理的な討論をする、という物だ。
 最近の私立大学の面接試験はそういう能力を重視すると言うから、そういう特別授業を取り入れたそうだ。その日はテーマは僕が「夫婦別姓」を選んだ。
 賛成派として香田美優、あの筋金入りのお嬢様。反対派として真田幸、あの女剣士がさっそく激論を繰り広げた。まずは香田。
「日本ではまだまだ女性の社会進出が遅れています。その障害の一つが結婚を家同士の結びつきとみなす風潮です。個人の人格が尊重されるべき今の時代、夫婦別姓は当然の流れだと思います」
 いや、これは驚いた。名門私立は伊達じゃない。高校三年生でここまで理路整然と語れるとは。次に真田が反論する番だ。
「いえ、ベッセイか、ドウセイかはあくまで当事者の自由な選択に委ねるべきです。ベッセイを禁止すべきだとまでは言いませんが、よほどの覚悟がない限り、安易にそれを社会の常識だと言いきってしまう事には問題があります」
 ほ、ほう。この子、体育会系だと思っていたが、頭のキレもなかなかじゃないか。ただ、それだと夫婦別姓に完全に反対という論理にはならないな。真田が続ける。
「それにベッセイは家族のきずなを弱める危険があります」
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