私立聖ブルージョークス女学院
 だが、先生たちの前に出た瞬間、僕の体は後ろからがっちりと両腕を抱え込まれて抑え込まれた。わ、綾瀬先生と教頭が二人がかりで僕を押さえつけている。僕はびっくり仰天してあがくが、女性とは言え二人がかりでは身動きも出来ない。
 すると女生徒たちが一斉に僕に近づいてきた。まず名取千尋が近づいてきた。真っ赤なルージュを塗った唇が、僕の顔に近づいて来る!ちょ、ちょっと待て。何をする気だ。
「はい、先生。一年間がんばってくれた、ご褒美ですう」と言って僕の頬に、チュッ!
「この一年の御恩は生涯忘れません。チュッ」と、これは真田幸。
「次はわたしの後輩たちをよろしくね。チュッ」と、これは葉月琴音。
「センコー、元気でな。綾瀬先生に襲われるなよ。チュッ」と、槇明日香。
「あたしの国に来たら、会いに来てね。チュッ」と、リン・ジンファン。
 やっと体を放してもらったところで綾瀬先生が手鏡を僕に向けて見せた。僕の顔中に、赤、ピンク、オレンジ色とりどりの口紅のキスマークが所狭しと並んでいた。僕は両手を振り上げて怒鳴った。
「こらああ!お前たちは、もう、最後の最後まで~!」
 彼女たちは「キャー」と笑い混じりの悲鳴を上げながら、一目散に門の外へ駆けて行く。そして門の境目でくるりと一列に並んで振り返り、誰にともなく一斉にお辞儀をして大声で言った。
「お世話になりました~」
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