私立聖ブルージョークス女学院
単元3 水無月
雨の日が続くジメジメした季節になった。僕はこの月、剣道部の顧問補佐をする事になった。野外競技の運動部は雨で練習がままならない所が多かったが、剣道部は室内競技なので、その心配はない。
驚いたのは、剣道部の主将が真田幸だった事だ。春の盗み聞き三人組みの中にいた背の高い子だ。なるほど、妙に時代がかった話し方をすると思ったら、こういう事だったか。なんでも歴史上の剣豪の大ファンらしい。いわゆる歴女というやつか。
その日は剣道部の他校との練習試合だった。相手は県立だが剣道の強い事で有名な共学校の女子チーム。僕は見学がてら審判をやらされる事になった。五人ずつの立ち合いでわが校は二勝二敗。主将同士の決戦だ。こちらの大将はもちろん真田幸。
相手の主将は試合直前に僕と真田に向かって、思いがけない事を言い出した。
「本日は、流儀は自由にしてよいとの事ですので、小太刀を一緒に使わせていただいてよろしいでしょうか?」
そう言って彼女は右手に普通の竹刀を、左手にその半分ほどの長さの短い竹刀を持つ。
真田が「かまいませんが……二刀流ですか?」と面の内側から問いかけた。相手の主将はこう答えた。
「はい。わたしは両刀使いですので」
こ、これは歴史に名高い、宮本武蔵の「二天一流」か?す、すごい。
驚いたのは、剣道部の主将が真田幸だった事だ。春の盗み聞き三人組みの中にいた背の高い子だ。なるほど、妙に時代がかった話し方をすると思ったら、こういう事だったか。なんでも歴史上の剣豪の大ファンらしい。いわゆる歴女というやつか。
その日は剣道部の他校との練習試合だった。相手は県立だが剣道の強い事で有名な共学校の女子チーム。僕は見学がてら審判をやらされる事になった。五人ずつの立ち合いでわが校は二勝二敗。主将同士の決戦だ。こちらの大将はもちろん真田幸。
相手の主将は試合直前に僕と真田に向かって、思いがけない事を言い出した。
「本日は、流儀は自由にしてよいとの事ですので、小太刀を一緒に使わせていただいてよろしいでしょうか?」
そう言って彼女は右手に普通の竹刀を、左手にその半分ほどの長さの短い竹刀を持つ。
真田が「かまいませんが……二刀流ですか?」と面の内側から問いかけた。相手の主将はこう答えた。
「はい。わたしは両刀使いですので」
こ、これは歴史に名高い、宮本武蔵の「二天一流」か?す、すごい。