雨をあびるアジサイ
「……私も、火事だって知ったときはすごく……衝撃だった」
「…………」
「私、母子家庭で。でも、自立してひとり暮らしを始めたのをきっかけに、母がかねてから付き合ってた人と再婚」
「…………」
「それで、のんびり夫婦で暮らせる新しい場所に……。なのに、引っ越したばかりの家で、あんな大きな火事が起こるなんて」
声を切って、一拍置く。
「まさかと思った……。でも、駆けつけたときにはもう……何もかもが灰になってしまって……」
「…………」
「ショックで、ずっと泣いた……。たくさん涙を流して、枯らして、両親が最後にすごした街を見て回ってた。その途中、あの公園であなたがベンチにいて……」
か細くなっていく語尾。
「理由はわからなかったけれど、私と同じように泣いてたから、無視ができずに、声をかけて……それで……」