雨をあびるアジサイ



「あっ、いいんですいいんです。ただちょっと、いや、だいぶ辛そうな表情していたから心配になってしまって」


「…………」


「なんていうか、変な……その、胸騒ぎがしてしまって」



ノイズの隙間から聞こえてきた、


「胸騒ぎ」


という単語に、ぼくは火事前日の言葉を思い出した。



無意識に彼女と亜紀が重なった気がして、たしかめるようにつぶやいた。
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