インサイド
「私、ここに居てもいいですか? 聴いてみたい。二人がこの曲弾くの」

「もちろん」

「どうぞ」


 あっさりと了承をいただき、千帆は壁側のイスに真っ直ぐに座った。

背筋を伸ばして向かいたい。そんな気持ちだった。


 一年生の遥が、先輩の裕明と対等に口をきいている。テンポのおさえ方も曲想も、二つのとらえ方を寄せていく。

 演奏者だ、二人とも。

羨望もある。

そして誇らしさ。

千帆は二人の間に交わされる音と音楽を、幸せそうに聴いていた。

顔が自然に笑ってしまうのを、気付いていないから止められない。


 一時間経つ前に曲になり、二時間かけて音楽になった。


 羽のようなヴァイオリンを、ピアノが引き付けているような……。
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