インサイド
「そうだ」

『星の光』……だと聞いてみれば、まァそうだったような気持ちにならなくもない。

ずいぶんとひいきしている自覚は、これでもきちんと持っている。

千帆、オレだからわかってやっているんだぞ。

誰にも聴かせたくはない、あの演奏が頭の奥で続いていた。冷や汗ものだ。

そして嘘はお見通されている。

自分で考えてもお粗末な、あまりにごまかす努力に欠けた返事をしていた。

「裕明の娘ですからね。またお会いしますよ、光栄です。貴方が育てたお嬢さんの、さらなる成長に立ち会えるとは」

「どんな男だ。裕明てーのは」

「話して差し上げてもいいですよ、もちろん、あなたがそれを望むならですけれど」
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