インサイド
「裕明はあれで謙虚な方ですよ。自分の力をわかってないくらいだ」

「そんな奴がなんで自分以外の奴の面倒なんて見るんだよ」

「余裕ですよ。好きなことをするだけの。裕明は人間の音を聴きたがるんです」

「にんげんん?」

「『千帆ちゃん』は珍しい、人間的な方ですからね。非常に珍しい」

これは皮肉だ。
それはそれは千帆は、自由気ままに育ってしまった。

「千帆の弱点を見抜いたことなんて自慢に思うなよ。誰にだってわかるんだからな」

「おやおや」

「裕明はともかく、おまえは確実にやな野郎だ」

「でもお嬢さんはいいものを持っている。それを言えば僕も浮上しますよね?」

 きっと生涯揺らぐことなどない安定しまくった態度で、ギルバートは言った。

おまえにちょっと褒められたくらいで、オレの気持ちが揺らぐと思うなよ。
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