インサイド
誰か来た。

扉はがちゃんと開かれて、

「見つけたッ、た――」

すてん。

マンガのようなそんな音が聞こえそうな、見事なコケ方だった。

ドアの下に段差が、あるとしたならほんの数ミリメートル。

内と外に半分ずつ、床に転がった女の子を見ている、千帆の口は開いたままだった。

「何してんの? 奏(かな)」

誰か他の人間を予想していたのかもしれない。

裕明はあきらかにほっとした様子で息をつき、立ち上がると事故現場に歩み寄る。

「まず立ちなさい、ほら」

「痛い……」

「そりゃそうだろう」

 小さい女の子にするみたいに、まるで抱き上げるみたいに――。

そりゃっ、全然間違っていないけど。

相手は小さい女の子だけどッ。
< 35 / 109 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop