インサイド

「小野里先生って変な人だけど、作る曲はきれいだよね」

「変な人だけどな」

「これ絶対、たーちゃんに捧げてるってば。たーちゃんがつれないから、私のとこに持
って来るんだよ。担任だもん、断れないから奏ちゃん困っちゃうわ」

「優しくしてるじゃないか。ぎりぎりまで」

「ほら、この辺りの和音なんていかにもって感じでしょ。弾いて弾いて、もう一回。――うぅん。ロマンチズムの極地だねっ」

「凝りすぎ。一人で弾かないだろ、これ」

「だからそこのとこがたーちゃんなんだってー。普通は無理だよ。私もやんない」

「普通だったらオレもやりたくない。指つりそう。犯罪だよ、小野里」

「あー、たーちゃんをダメにして監禁して自分のためだけのオルゴールにするのねっ」
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