インサイド
「げじゃない、げじゃ。なーにしてんスか、こんなとこで!」

「あそー君だ。こんにちはー」

「奏! おまえが一緒か。おまえのせいかーっ? 一部屋一部屋見て回ったよ、校舎半分!」


一歩一歩に力を込めて、つっかつっかと侵入してくる。

火でも吹きそうなその様子に、千帆は思わず飛び退き道を大きく開けていた。

真っ直ぐ向かった先では奏が、これ以上はないといった邪気なしの声にて、

「なんの話? たーちゃん。奏のせい?」

「誰かのせいにしたいかも。一河(いちか)、おまえが被るのってどう?」

「なんだそりゃっ」

咆哮。

「うるさいなー、あそー君は。せっかくたーちゃんでロマンチシズムだったのに」

「ロマン? なに。ロマン派? なにか弾いてたんすか?」
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