インサイド
 奏に、そして忘れずに千帆にも手を振り、四十六ッと騒ぐ麻生をネクタイにて引きずって、裕明は部屋を出て行ってしまった。

つまり取り残された、二人で。

――青山奏と。


 ふいに思い出した。
奏のことを話していたのだ。

裕明は奏を『どうにかしよう』と考えているという話。

そして『手に負えない』のだと。なにが?

 いとこって、こんなに仲のいいものなんだろうか。

いとこって、結婚できるよね? 日本の法律ではちっとも支障なし。

だとしたら、親とか決めて婚約とかしちゃってたりして。

あぁ、どうして今になって怒涛のようにこんなことを次々と思いついてしまうんだろう。

本人を目の当たりにして。


「千帆ちゃんももう帰るよねっ?」

跳び上がりそうになった。
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