インサイド
あぁ――と思った。そんな問題もあったか、と。

問題山積みは、サマーコンサートだけじゃない。

「その人って誰? さっき話に出てたよね。私、たぶん見た人だと思う。その人歌ってて、先ぱいが伴奏してたよ。大人の」

女性(ひと)って感じで。

 その言葉は、飲み込んでみた。

口にするのは悔しい気がしたのだ。

磨かれたビューティフルはまず勝負にならないとわかり過ぎるけれど、改めて確認してやってはいけない、こんなこと。

「さっちゃんは歌うお仕事の人なの。遠すぎて誰も説明できないけど、びみょーに親戚、私たち」

「びみょーな親戚……」

「うん」

またおかしなことになっている原因は、奏の話しぶりのおかしさだけではないようだった。

千帆も――さっき奏のしていたこと――肩をすくめて首を振りたくなっている。

疑問はすっきり、クリアにならない。
問一の次にはさらなる問二が待つように。


「ところで、奏ちゃん」
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