インサイド
 女優ほどの美人だ。

「ありがとう、回復したわ」

にっこりと笑い。

「いーえ。いつでもどうぞ。大歓迎」

にっこりと応え。

「じゃ帰るね」

「喉、大切にね」

 千帆に対しての会釈にまで気持ちの良い微笑みを乗せ、大きな歩幅でその場から去る。

まるでメトロノームを思わせる、カツカツと子気味の良い音は、部屋の空気も刻むようだった。

 美人! 間近で見ればますます、目の覚めるような美人!

おかげさまで、本当に目も覚めた。

ひるんでしまうほどの勢いで、現実が戻ってくる。

自分がここに先輩に会いに来たということ。

学校生活をサポートしてくれるとかいう三年生に。

 そうだ、さっき名前を呼んだピアノを弾いていた人。
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