インサイド
 女の子だったなら確実に偵察に出ていたところだったが、男子だと聞いた途端にどーでも良いことと終わっていた。

何組のなんとか君ってところは、誰かから聞かされたような気もするけれど、ちっとも頭によみがえってきはしない。

白井君。

果たしてそれを聞いただろうか、自分の耳は。

 えへへといった雰囲気で、当たりを引いたもの同士は微笑みあった。

麻生先輩の言うように兄弟弟子とか、同門会? とにかく共通項を持つわけだ。


「先生が来るまで弾いてる? 代わろうか」

「え。いい。弾いてたでしょ? 続けて」

「ありがと」

 いいえぇ、お礼なんて。

もしかしてとっても当たりのレッスン仲間かも。

仲間は二人しかいないのだから、合う人でなくてはツラいことは予想できる。

特に先生はすでに望み薄いわけだから……、と、それを思うと気持ちはまた落ち込んでしまう。がっくり。


 立木先ぱいが恨めしいなんて、間違ってるよぉ、千帆。
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