インサイド
「千帆ちゃん」

「はい?」

「千帆ちゃんでいい。みんなそう呼ぶの」

多少誇張だが嘘でもないし。

「かわいいから」

これは真偽を確かめたことはないが。

「なにそれ」

 簡単だった。

遥はおもしろそうに笑っている。

そう、バランス的にもこの方がいい、と千帆はほっとしながら考えていた。

自分が『遥くん』を採用したわけだし、ならば相手も『千帆ちゃん』だ。

 惹きつけられた曲は題名を持っていた。

コピー元の状態がすでに良くはなかったらしく、ざらざらの斑点も写り込んでいる間に太文字で走るようなこの、……この単語は……無理に解読、すらできないし。

「英語じゃなくない?」

「うん、フランス語で『雨』。こういうの好きなんだ。流れ続ける感じの曲」
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