インサイド
「千帆ちゃん、楽譜室って行ってみたことある?」

「ううん」

「おもしろいよ」

 楽譜室。

その話を聞いてみたかったのに、そこで小野里先生の登場となった。

もっと遅れてくれても良かったのに、と千帆は少々がっかりする。

いや、いっそのこと来なくても良かったのにと、大幅にがっかりしていた。

課題をまったく認識していなかったことに、二人して怒られた。

また一つ共通項を得て、こっそりと笑みなど交わしたのは、先生が背中を向けた隙。

 大変に先生らしく見える小野里先生の、裕明に捧げられているという天空の調べを思い出し、千帆は思いもよらず楽しい気持ちで過ごしていた。

この話を、遥は知っているだろうかと、澄ましてプリントを見つめている顔に思う。
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