インサイド
「見つかっちゃった、おじゃましまぁす。特別レッスン? 先生待ってるとことか?」

「大丈夫だよ、小野里先生は現れないから」

「私、顔に出し過ぎてる? なんでわかるの?」

「それで小野里先生に遊ばれてる。って、わかってる?」

「えっ、うそっ」

「本当です。今やってるレッスンの中で、あの時間が一番楽しいよ。バトルだもんね、ほとんど」

「あの先生ってなんかそういう気分にさせるって言うか……。あ、そうやって遊ばれてるのか、私は」

当初考えていたような嫌さはなかったけれど、疲労困憊するレッスン時間であることでは予想が正解なのだった。

遥の言うように、ほぼバトル。

小野里先生が立場差を利用して、無理難題を吹っかけてくるために。

「くそう。見てろよ」

大人気のない。

力いっぱいきっぱり言うと、すっきりとした気分になってしまった。

遊ばれていると自覚したなら、つまり相手が遊びのつもりであると発覚したなら、報復方法は見つかるはずだ。

千帆はこんなことを、長年の経験から身に着けていた。

大人相手に挫けない。

良くも悪くも。
< 88 / 109 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop