タバコとシャボン玉
第一章《出会い》
一瞬
あれは、夏にしては、あまりぱっとしない、でも、じめじめとした、曇りの日。
肌にまとわりつく服は、汗を吸ったせいか、少し重く、さらに臭い。
女性としては、あまり人に知られたくないこの、なんとも言えない臭いを嗅ぎながら、私、杉原桃子(すぎはら ももこ)は、学校からの帰宅途中で、いつもの道を歩いていた。
田舎と都会の、丁度真ん中辺りに位置するここは、変にパトロールが多く、変に治安が悪く、なんというか、微妙に冴えないところである。
周りを見れば、鬱蒼と生い茂る木々も、コンクリートで積み上げられた、立派なビルも見える。
私は、空を見上げながら、並木道を歩いていた。