【一話読み切り】 科学は「愛せ」と言っている
 「だけど――!?」
 
 しかし、結局は白目を持つ私たちが生き残った。
 
 というか、「あなたを見ている」を伝える力を持つ個体が生き残った。


 
 赤ちゃんは母親を見つめ、
 少年は遙かな地平線を見つめ、
 青年と少女を見つめ合い、
 男は家族を見守る。


 私達にとって、視線は大事だ。
 
 ハエも、イモリも、カラスも、キツネザルも――。
 いや、目を持つ最初の生命からずっとそうだった。
 白目は邪魔だった。

 生命は4億年、視線を隠そうとし続けた。偽り続けたのだ。
 敵から身を守るために。自分の視線を気づかれないように。


 けれど人間は、たとえ外敵に殺されようとも――
「あなたを見ている」を伝えたくて進化を続けた。
 

 そして数百万年が経って、見つめる事が、見つめ合う事が、力になった。
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