【一話読み切り】 科学は「愛せ」と言っている
「―――生物ン時さ、なんでガン見してた?」
 帰りのバス。隣に座ったバカが訊ねた。
 こういう日に限って、部活が休みだったりするから困る。


「とぼけんなよ。ガン見してたっしょ?」

「!!」

 そう、あのときだ――!
 ”愚かなる理系女子”は知的好奇心が先行し、その目をじっと観察してしまったのだ。


 私は、このバカの視線を逆にたどりながら、ホモサピエンス・サピエンシスの目を“観察”していたのだ。


「ち、違っ!」

 違くなかった。

 高校生はそれを「ホモサピエンス・サピエンシスの眼球構造の観察」とは言わない。


 普通の高校生はそれを「見つめ合っている」と言うのだ。
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