佐山君とバスケ
私は、訊かないことにした。


「着いた。ここや」


さっきのセリフが嘘みたいに明るい声色で喋った。


夜船くんの家、それは灯り一つついていない、殺風景なアパートだった。


「お邪魔しまーす」


家に入ってすぐ気が付いた。


この家には、生活感がない。


きれいなままの台所に、何もない部屋。


そこは本当に、夜船くんが寝るためだけにあるような空間だった。
< 84 / 165 >

この作品をシェア

pagetop