キミニアイヲ.
もう一つは、上京先には風汰の祖母がいたこと。


祖父を亡くし一人で暮らしていた祖母は、二人の事情を聞くと意外にも好意的で、

『行くとこがないなら家へおいで』

と言ってくれたのだった。



風汰は職を見付けると朝から晩まで働いて、紅葉は祖母の手伝いをしながら風汰を支えた。


親も、兄弟も、友達も捨ててきた二人。


それでも幸せだった。



優しい祖母のもとで、紅葉の中ですくすくと育っていく小さな命を守っていくこと──


それだけが、二人の大切な、大切な生きがいだった。




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