キミニアイヲ.
楓が産まれた後、二人は貧しいながらも幸せに包まれて仲良く暮らしていた。
出産する直前に、婚姻届も提出することが出来た。
二人も知らない間に祖母は風汰の両親を説得してくれたらしく、彼の両親が証人になってくれたのだ。
こうして無事に結婚・出産することができた紅葉は、19歳で親になったのだった。
この時が、二人の幸せの絶頂期だったかもしれない。
楓の誕生から一年が過ぎた頃、徐々に祖母の体調が悪化していき入退院を繰り返すようになった。
相変わらず仕事で忙しい風汰と、育児と介護に追われる紅葉。
この頃から二人の間には見えない溝が出来始めていた。
もう埋めることの出来ない、深い溝が──