キミニアイヲ.
楓を連れて家を出た紅葉は、小さなアパートで質素な生活を始めた。


楓を保育園や友達に預けて、とにかく必死に働いた。

昼間はパート、夜は水商売という生活。


それでも楓と二人になって、いくらか気も軽くなり、楽に感じるようになっていた。



二人の生活に慣れてくると、紅葉の心に再び風汰に対する想いがふつふつと沸き上がってくる。


別れてからも、風汰のことを考えない日はなかった。


嫌いになったわけじゃない。

嫌いになんてなれない。


ただ、好きだという想いだけでは生きていけないと、現実の厳しさを分かってしまっただけ──



風汰のことは愛してる。


だけど、きっと前のようには戻れない。


紅葉は必死に働くことで、そんなもやもやした想いを断ち切ろうとしていた。


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