キミニアイヲ.
「職権乱用!!」


と叫ぶ声が背中に響くが、楓は「気にしな~い」と言いながらエレベーターに乗り込む。


普段ならそんなやりとりにクスッと笑ってしまうところだが、今の莉子にそんな余裕はない。



303号室は以前の部屋ほど広くはないが、やはり綺麗で落ち着いた雰囲気だった。


楓にソファーに座るように促されたが、莉子は静かに首を振った。


そんな莉子の顔を正面から覗き込むように、楓は少し身をかがめる。



「どうした?莉子…?」



少し低くて、優しい声が響く。


ついに真実を知る時が来たのだ……


莉子は心臓の鼓動が大きく、早くなるのを感じながら口を開いた。


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