キミニアイヲ.
男はゆっくり莉子に近付くと、顎をくいっと上に向かせて莉子を一瞥する。


冷たく鋭い瞳と視線がぶつかると、莉子は背筋がゾッとするのを感じた。


何の感情も持たない人形のような表情から、非情冷酷な雰囲気が一瞬で伝わってくる。



「…お前が楓が見付けてきた女か」


「──!!」


無表情のまま一言だけ発すると、男も向かいのソファーに座った。



“楓が見付けてきた女”

それを知ってるということは……



「あなたが…楓のお兄さん…?」



恐る恐る話し掛けると、男は莉子を見やってほんの少し右の口角を上げた。



「…あぁ、そうだ」



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