キミニアイヲ.
「たぶん…母さんは兄貴がそれを渡そうとしてくれてたことも、捨てたことも全部知ってたんじゃない?

兄貴の好意を無駄にしないように自分で探したんだよ、きっと」



楓はテーブルに置いたネックレスを再び手に取って毅に差し出す。



「これは、母さんが兄貴を大切に想ってた証拠だよ」



受け取ろうとしない毅の手を取って、楓はそっとそれを握らせた。



莉子はなぜか涙が出そうになった。


交わることのない二人の想い…

だけど、お互いが大切な存在だったことに違いない。


二人の間には
確かに“愛”があったんだ。



紅葉のような、紅く美しい輝きを放つこのネックレスが、毅の闇を照らす一筋の光──


たった一つの救いになる。



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