キミニアイヲ.
無機質な建物を出ると、辺りは一面真っ白な絨毯に覆われていた。
まだ誰も踏み込んでいないその領域に足跡を残して、道路の脇に停めてある楓の車に乗り込む。
「楓…ありがとう、助けに来てくれて」
乗り慣れた助手席、聞き慣れたBGMは、さらに莉子を安心させてくれる。
やっと笑えるようになった莉子を見て、楓も少し笑みを見せた。
しかし、それはすぐに難しい表情へと変わる。
「本当に…悪かった。利用しようとしたりして」
莉子は運転する楓の手を見ながら、小さく首を振った。
「やめようとしてくれてたんでしょ?
それが…楓の本当の気持ちなんだよね?」
赤信号に差し掛かってゆっくり停車し、莉子の優しく問い掛ける声が響く。