キミニアイヲ.

「あとは荷物これだけ?」


一気に生活感が増した部屋で荷物の整理をしている莉子に、一つの段ボールを指差して楓が言った。



「うん、あとその小物を整理すれば終わり」


「ふ〜ん……なんだコレ?」



段ボールの中を覗いて、楓は眉をひそめる。

摘むようにして取り出したのは、インディアンのような格好をした派手な人形。



「あぁ…それは社長が…。餞別だって言われて無理やり…」


社長が言うには、安産祈願のお守りらしい。



「『愛莉ぃ〜元気でな〜!!』って泣く泣く渡されたら断れなくて…。
しかもなんで安産祈願なのよ」


莉子はさも迷惑そうに苦笑いを浮かべた。


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