キミニアイヲ.
そんな莉子の視線に気付いて、楓はにこりと笑う。



「おめでとう」


「あ…ありがとう…。
ていうか、あんまり驚かないん…だね?」



こんな発表をされたにも関わらずいつものように冷静な楓に、莉子の方が驚いてしまう。



「驚いたよ。最初に聞いた時は」


「え?最初??」




それは数日前、莉子が検査薬で調べた日のこと。


休憩中に煙草を吸っていた楓のもとに美和がやってきて言った。



『社長…これから禁煙した方がいいかもよ?』


『なに突然。無理だよ、俺ヘビースモーカーだもん』


『莉子ちゃんが妊娠してたとしても?』



楓は一瞬煙草を落としそうになった。

…が、冷静を装ってその煙草を灰皿に押し付ける。


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