キミニアイヲ.


それから二週間後。


楓は二回目の検診を受けている莉子を待っている。


産婦人科の駐車場の少し離れた場所に車を停め、二枚の紙切れを眺めながら煙草を吸っていた。



そのうちの一枚を見ながら、それに書かれている住所をナビに登録する。


もう一枚は綺麗に折り畳んで胸の内ポケットに忍ばせた。



ふとミラーに目をやると、莉子が早歩きでこちらに向かってくるのが見える。


一人で少しにやけている莉子を見て、楓もふっと顔を綻ばせながら煙草の火を消した。



「お待たせ!」


母子手帳を持ちながら、莉子はいつになく明るく車に乗り込んできた。


< 298 / 370 >

この作品をシェア

pagetop