キミニアイヲ.
いつの間にか、二人の足は自然とベンチがある場所へ向かっていた。

ここは、初めて二人がキスをした思い出の場所。


ふいに莉子は足を止めて、冬空を見上げる。



「ねぇ、楓……」


「ん?」


「またしばらく煙草は隠れて吸ってくれる?」


「………」



楓は瞬きを数回してから、莉子が言ったことの意味に気付いた。



「もしかして……」



莉子は恥ずかしそうに俯きながら楓にそっと寄り添う。



「…今度こそ幸せになろうね、三人で」



そう言って幸せそうに笑う莉子に応えるように

楓はその華奢な身体を、優しくしっかりと抱きしめた。


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