キミニアイヲ.
しかも、そんな一番デリケートなことを遠慮なく聞いてくるなんて…

やっぱりこの人変わってる、と莉子は思った。


──でもそっちが遠慮しないなら、こっちだって気にする必要ないよね?




「……あたしはね、愛を知らないのよ」



どこか遠くを眺めながら、無表情で呟く莉子。


ウイスキーが入ったグラスをゆっくり口に運びながら、楓は彼女を横目でちらりと見た。



「誰からも…親からだって愛されない。…愛する人もいない。
そんな自分なんて生きてる意味ないかなって思ったの」



気が付いたら、莉子は自分の親のことも、どうしてこの仕事をしているのかも、全て楓に話していた。


自分でも驚くほど、聞かれたことに対してためらうことなく話せていた。


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