キミニアイヲ.
「その顔だよ」


「えっ?」


それまで顔をくしゃっとして笑っていた楓は、莉子を優しい眼差しで見つめていた。



「笑顔でいた方がもっと可愛いし、その方が人生得だぞ」



楓の骨張った手が莉子の頭を優しく撫でる。


また、心臓がドキンと鳴った。



「笑顔でいなきゃ、幸せになれるもんもなれないんだから」


「……うん」



莉子は楓を見上げて、微笑みながら頷いた。




自分の気持ちを理解してくれる人なんて、どこにもいないと思ってた。


何も知らない人に口出しされたくもなかった。



それなのに、楓の言葉はすんなりと莉子の心に浸透する。


逢ったばかりなのに…

何故こんなにも気を許せるのだろう。



莉子にとって、楓だけは他の誰とも違う特別な存在になりつつあった。




< 63 / 370 >

この作品をシェア

pagetop