キミニアイヲ．

「あの……また指名してくださいね」


結局口から出たのは、いつも客に言うのと同じセリフ。


それでも、楓は優しく微笑むと頷いてくれた。


莉子はそれを嬉しいような、切ないような、複雑な想いで見つめていた。




楓もまた、複雑な想いを抱いて歩く。


莉子と今日会ったのは、彼女を心配していただけではなく、もっと別の理由があったからだ。



そのために近付いたのだが……


楓の中でもう一人の自分が“本当にそれでいいのか？”と問い掛けている。



しかし、これはもう決めたことだ。


重要な“役割”を、彼女に与えるのだと──



「キミは十分存在価値があるんだよ…莉子ちゃん」



そう呟く楓の瞳は冷たく光っていた。